物置に長く置かれたモノは、埃や砂をかぶり、湿気で劣化する。田舎の一軒家では、ネズミが入り込むこともある。そして、片付いたところで、家は売れない。
「こういう家だと売却もしにくい。交通の便が悪いとなかなか買い手がつかなかったり、解体するにもとんでもない費用がかかったります。更地にしたところで、周りに農地が多い中でわざわざ買う人も少ないですし、古民家をリノベーションして活用する人も一握り。片付けがうまくいったとしても、家の売却処分で困られる方が多いです。逆に、そういう問題があるからこそ、片付けをせずに放置してしまいがちなんです」(二見氏)
売れなければ、固定資産税を払い続けることになる。今回の家もそうだった。
「思い出のモノがたくさんある」と言っていた母だったが、その気持ちは意外なほど吹っ切れていた。作業の序盤、まだモノが残る段階で、母はこう言った。
「もうこの家に未練はないです」
だから手放したい。それなのに、手放せない。
すっきりとした部屋で「思い出したこと」
「いい思い出ばかりが浮かんできます」
片付けの終わり、畳の広がった部屋を見て、母は言った。すっきりとした室内で思い出したのは、朝早く起きて車の中でおにぎりをつくり、夫が運転する横からそれを食べさせた日々のことだった。
「畳がこんなにきれいに見えたのは8年ぶりくらいです。倒れてばかりで、こんなに笑顔になることはなかったんですよ。久しぶりに笑って話ができるようになりました」(母)
片付けが済んでも、この家はまだ売れていない。片付けは、この家が抱える問題をすべて解決したわけではない。それでも、生きているうちに手をつけたから、娘は1つひとつのモノについて母に聞くことができた。母が亡くなったあとでは、娘は何も知らずに捨てるしかなかっただろう。


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