リーダーシップを研究するうえで、こうした要素を数字や理論だけで捉えることには限界がある。「百聞は一見にしかず」ではないが、実際に経営者と向き合えば、声と話し方が人をひきつける力の大きさは実感できる。
奥田氏や坂根氏と話していると、論理的な語り口でありながら、発言の意図が自然に頭へ入ってくる。2人にはもともと、よく通る太めの声質という生来の強みがあった。そこに、修羅場で鍛えられた判断と行動の経験が重なり、声に深い味わいが加わった。
修羅場をくぐってきた経験は、いつの間にか論理的な思考や、自分なりの経営哲学へと形を変えていく。それが声にのると、話に一段と説得力が増す。声の魅力と、実践で磨かれた論理。この2つが重なり合うことで、聞いている側は自然と「なるほど」と引き込まれてしまうのだろう。
右肩上がりの成長が過去のものとなり、地政学リスクや技術革新の波が絶え間なく押し寄せる今、経営環境は先の読めない乱世である。安定成長を前提にした経営が通用した時代は終わり、判断の遅れがそのまま競争力の低下につながりかねない。
経営環境が大きく変化した今、奥田氏や坂根氏が修羅場で培った胆力や現場感覚を、過去の成功体験として振り返るだけでは足りない。そこから何を学び、現在の経営者育成にどう生かしていくかを、改めて考える必要があるのではないか。
組織全体を動かす「ゼネラルマネジメント」の力
その問いを、これからの技術革新と切り離して考えることはできない。8月に北京で開かれた世界ロボット大会では、ヒューマノイドが単独で作業するだけでなく、複数のロボットが箱の搬送、積み上げ、仕分け、補充を分担し、1つの物流工程を動かす実演まで行われた。
AIとロボットが結びつけば、これまで人間が担ってきた仕事の単位そのものが変わっていく可能性がある。そうした時代には、専門性の高い知的労働でさえAIに置き換えられる領域が広がる。
専門性を職務ごとに切り分けて育てるジョブ型雇用も、AIによってその前提を揺さぶられることになるだろう。むしろ重要になるのは、専門領域を越えて人、技術、事業を結びつけ、組織全体を動かすゼネラルマネジメントの力ではないか。
経理出身の奥田氏も、技術畑出身の坂根氏も、出発点となった専門領域にとどまらず、海外や現場で経験を重ね、経営者としての総合力を身につけていった。その歩みは、これからの経営者育成を考えるうえで重要な示唆を与えている。


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