それでも、珠緒さんは家庭の事情を話し、なるべく長めに休暇を取得できるよう調整して、2週間ほど夏休みをとるようにしている。「たまに、仕事と家庭の板挟みになっていると思うこともあります」と珠緒さんは苦笑する。
ジェロームさんは「日本にいるときの珠緒は、少し窮屈そうに見える」と話す。二人がロンドンに住んでいた頃や、ジェロームさんの仕事の関係で、香港に住んでいたときのほうが「珠緒さんが伸び伸びしていた」というのだ。
これには、珠緒さん自身も思い当たる節がある。
「日本社会は、暗黙のルールが多いですよね。私は日本人なので、その場に応じた振る舞いを自然にしていますが、ジェロームから見ると、その姿が私らしくないように見えるようです」
ジェロームさんは「日本が安全で暮らしやすい国であるのは、日本社会が求める暗黙のルールや周囲への気遣いがあることで成り立っていると思います。その一方で、社会が個人に求める圧力が強いと感じることもある」と話した。
すれ違わない秘訣は「諦めない」こと
最後に、夫婦円満の秘訣を聞くと、口を揃えて「コミュニケーション」という答えが返ってきた。珠緒さんは「異文化で生まれ育ったからこそ、お互いが違って当然という前提があります。だから一般的な夫婦以上に、コミュニケーションを意識的に取ってきました」と話す。
意見がぶつかったとき、二人は一度で結論を出さずに回数を重ねるようにしている。まずお互いの意見を話し、「今の時点では、そういう考えなんだね」と理解して、一度置いておく。合意することを急がずに、相手の考えに対して理解を深めて、1週間後あるいは1カ月後に同じテーマで話すこともある。時間が経ってから「あなたが言っていたことが正しかった」と気づくこともあるという。
ジェロームさんはこう言う。「夫婦であれば、ある程度の期間が経つと、暗黙の了解が生まれてくるけれど、私たちの場合は国際結婚で言葉の壁もある。だからこそ、絶えずコミュニケーションを取り続けてきました」
珠緒さんもこう続ける。「コミュニケーションをギブアップする方が楽なのかもしれないけど、でも、諦めた時点からわかり合えなくなる気がするんです。だから諦めずにコミュニケーションを取り続けてきて、今があるのだと思います」


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