「こんなはずじゃなかったのに……」
ふがいなさに胸を痛めながら、ふと祖母の顔が頭に浮かぶ。
――女手ひとつで二人の子どもを育てた祖母は、どんな夏休みを過ごしていたんだろう?ごはん作りはどう乗り切っていたんだろう?
シングルマザーとして、20代から70代までの約50年間、朝から晩までひたすら働き続けてきた祖母は、今年で85歳になる。お盆明けにようやく体調が回復したわたしは、気になって電話をかけた。
「もしもし、どうしたの?ああ、あの荷物はもう届いたよ」
電話に出た祖母が、弾んだ声で話す。「そう、よかった。今日はね、ちょっと聞きたいことがあったの」急に切り出すわたしに、「え、なあに?どうしたの?」とやや身構える祖母。
「おばあちゃんが子育てをしていたころの話が聞きたくて。夏休みのごはんって、どうしてた?いつも何作ろう?って、悩んじゃうんだよね」と聞くと、ほっとしたように「なんだ、そんなこと?」ふっと笑い、少し間を置いて「うーん、そうねえ」気のない声で話し出す。
「夏休みはだいたい、おにぎりに、チャーハンね。あと、そうめん、焼きそば、焼うどん……。お昼なんて、一品料理でいいのよ。それなら、ほかにおかずも要らないでしょう?」
令和に子育てするわたしもよく、そうめんや焼きそばを作る。いつの時代もレパートリーは変わらないのだなあと妙に納得する。
「でもおにぎりって、どんなの?」続けて問いかけると、「ふりかけを混ぜるだけよ。それで十分!」あっけらかんと言う。
わたしは小学生時代、夏休みをよく祖母の家で過ごした。そのとき出してもらったのも、そうめん、おにぎり、それから甘い卵焼きだった。「よく作ってくれたよね」懐かしむように話すと、「麺だけじゃ、すぐお腹が減るでしょう。おにぎりなら腹持ちがいいからね」と笑う。
「でもね、ほんとうに忙しかったから、ごめんね。あんまり思い出せないの。もう忘れちゃったわ〜」電話の向こうで、冗談まじりにからからとまた笑う。
昭和・平成レトロな「時短おうちランチ」を再現してみた
筆者のわたし(孫)は平成生まれの35歳で、フリーランスの管理栄養士・ライターだ。今年で7歳になる小学1年生の息子を育てながら、在宅で執筆活動を続けている。


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