61歳で金沢大学に2年次編入した伊藤さん。医学部に入ってからは120人弱の同級生の中には、編入生以外に再受験生も5~6人いました。「大抵は20代後半から30代で、私は一番年長だった」と語ります。部活もやってみたいと思ったそうですが、難しかったそうです。
「前の大学では少林寺拳法部に4年間いたので、金沢大学でも部活をしたいなと思い、水泳部の歓迎コンパに参加しましたが、後で『定員が一杯なので遠慮してほしい』と部の主将に言われました。年齢で敬遠されたのかもしれません。
ただ、幸い近所にスイミングスクールがあって、そこに入会してから毎週、卒業するまで通えたのは良かったです。40〜60代の方々がいて、そちらでいろいろ仲良くしていただいたのもいい思い出になりました」
国家試験3浪→69歳で医師になる
還暦を迎えてから、2度目の大学生活を満喫した伊藤さん。しかし、医学部を卒業した後、伊藤さんを待ち受けていたのは予想外の壁でした。医学部卒業生の国家試験合格率は90%以上ですが、伊藤さんは3度の不合格を経験したのです。
「模擬試験の成績を見ると、毎年上位ではなくて合格ギリギリの危ないところにいました。最初は9割以上が通る試験で、自分も受かるものと軽く考えていたのですが、これはやっぱり大変だなと思いました。
医学部編入も4年かかりましたが、そちらはすぐに入るのは無理だと最初から思っていたので、その時より挫折感がありましたね」
しかし、70歳を前にした年の4度目の挑戦でようやく合格。その後は、金沢市内の城北病院で初期研修を2年間した後、大阪に戻り、現在は鶴見区のコープおおさか病院の総合診療科で専攻医として2年目を過ごしています。
こうして無事、69歳で医師になることができた伊藤さん。エンジニアとして35年間「同じ品質の製品を安定供給する」ことを使命としてきた伊藤さんですが、医師の仕事は対極にありました。


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