「前の仕事はものづくりで、同じ品物を同じ品質で供給することが基本でした。しかし、今の仕事は人間が相手で、同じ病名でも一人ひとり全部違います。年齢も小さな子どもから90歳、100歳の方もいらっしゃって、それぞれに対応して適切な治療をしなければいけないので責任の重い仕事であると思います。
でも、大変な仕事の中でもうまくいって患者さんに喜んでもらえた時は非常にうれしいですね。そういった醍醐味もある仕事です」
“再挑戦”を応援したい
現在、伊藤さんの周囲にも、同じように医師を目指す人がたくさんいます。
娘の保育園の同級生が「もう一度医学部に挑戦したい」と相談してきたり、今年も国家試験に届かなかった後輩と励まし合ったりと、「少しでも良い影響を与えたい」という気持ちで関わり続けています。
「金沢大に入った時、5年上の先輩に50歳で農林水産省を辞めた後、国試浪人を経験されて、60歳で医師になられた方がいました。金沢大に受かった後に話を聞きに行ったのですが、自分自身、その人にとても影響を受けた経緯があります。
私は編入試験を経験して大学に入った方とたくさん知り合うことができたので、仲間たちと、同じように試験を受ける人たちを応援したいと思っています。私が影響を受けた先輩のように、そういった立場の方々に少しでも良い影響を与えたいと思い、取材を受けさせていただきました」
編入試験、医師国家試験に合格するまで合計8年をかけた伊藤さん。57歳での退職から医師として働き始めるまでに10年以上の歳月がかかりましたが、その歩みに後悔はありません。
「受け続ける限り、必ず受かる」という言葉を自ら体現した軌跡が、今も挑戦中の人たちへの静かなエールになっていると思いました。


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