そもそも、人は何によって動くのでしょうか。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」というものがあります。ハーズバーグによれば、モチベーションには、大きく分けると二つの方向があります。
一つは、給料、昇進、評価、報酬といった「外から与えられるもの」によって動くことです。
もう一つは、「もっと成長したい」「この仕事が面白い」「誰かの役に立ちたい」「この仲間と一緒にやり遂げたい」といった、自分の内側から湧き上がる動機です。
「いい車が買えるぞ」という励ましは、典型的な前者です。
もちろん、外からの報酬が悪いわけではありません。問題なのは、それが相手にとって本当に「欲しいもの」なのかを確認しないまま与えてしまうことです。
「常識ハラスメント」とは
私は、こうした価値観の押し付けを、あえて「常識ハラスメント」と呼んでいます。
自分が育ってきた時代や職場環境の常識を、そのまま相手にも当てはめてしまうことです。
仕事柄、Z世代の社員の本音を聴く機会がたくさんありますが、そこで感じるのは、驚くほど自然に「面従腹背」ができるということです。
ある時、上司と楽しそうに談笑している若手社員のAさんに、「上司と仲がいいですね」と声をかけたことがあります。
するとAさんは、笑顔でこう言いました。
「いえ、大嫌いですよ!」
私は思わず目を丸くしました。
外から見ると良好な関係に見えていても、本人の心の中ではまったく違うことが起きているのです。
では、部下のモチベーションを上げるには、何と言えばいいのでしょうか。
私は講演や組織変革コンサルティングの中で、この質問をよく受けます。
しかし、「その人が何を大切にしているのか」を知らなければ、その人に響く言葉はわかりません。
言い換えれば、「魔法の言葉」は上司の頭の中にあるのではありません。
部下の中にあるのです。


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