新卒で入社したのは、静岡朝日テレビである。
「メディア」が人の考えを作っていく現場を、まず内側から見てみたい――現代思想・哲学で追いかけてきた問いを、実務の側から検証するには、テレビ局は格好の場所だった。
配属先は営業。彼はここで10年間、テレビの営業、番組制作、イベントや新規コンテンツの立ち上げに携わることになる。
手がけた企画では、当時まだ全国区になる前だった霜降り明星、フワちゃん、Aマッソといった次世代のお笑いタレントたちを、ビジネスプロデューサーとしてプロデュースした。当時はまだあまり知名度の高くなかった、のちにレジェンド的存在となる歌い手たちのイベントも手がけたという。
「いま考えてみると、地方局だったから超人気タレントでコンテンツを作れなかったんですよ。だから、マスで人気の人ではなく、界隈の中ですっごい人気の人を探してました」
カードゲームで市場と人の心を読み、大学でメディアを研究してきた男が、ここで「人が何を見るかを設計する側」に回った。テレビとSNSの情報格差を読む。やっていることは、中学生の頃のカード相場と構造的に同じだった。
テレビからアニメへ
10年間のテレビ局勤務の後、大貫さんの関心は次に移っていく。きっかけは、現ブシロード取締役の成田耕祐氏との業務を通じて、アニメーションの現場に触れたことだった。
アニメは、ドラマやバラエティとは違うかたちで、人の考えや価値観を強く形作るメディアである。子ども時代に見たアニメが、その人の一生の趣味や思想を決定づけることも珍しくない。
しかも、アニメ市場はグローバルに拡大し続けている一方で、その拡大の全体像を定量的に把握している人は、業界内に意外と少なかった。


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