カードゲームは、単なる遊びではなかった。手札を読み、山札に何が残っているかを計算し、相手が次にどう動くかを予測する。盤面の情報だけでなく、盤面の外の情報まで考えに入れる。相手は自分を舐めているのか、警戒しているのか。舐められているなら、負けていても足元を掬うチャンスを窺う。警戒されているなら、どこかで油断させる。
「相手の表情を読み、相手の手札を考え、相手がどんな行動をしてくるかを予想しながら、自分の山札の期待値を計算してリスクマネジメントをしていく」
少年は、そういうことに夢中になっていた。「相手が何を考えているかを考え、自分が相手にどう見えているのかを考えながら、自分の行動を決定していく」――メタ認知と呼ばれる能力が、ずば抜けていた。
中学生にして月30万円稼ぐ
だが、大貫少年の非凡さは、ゲームの上だけで完結しなかった。彼は、盤面の外にも視野を広げていた。
「インターネットが当たり前ではなかった頃の話で、カードゲームをやっていない人に説明するのは難しいんですけど、昔は情報の伝達がめちゃくちゃ遅かったんです。なので、カードの値段に地域差が生まれる。
海外、東京、地方と場所によって人気のカードが違い、値段差がありました。学校の授業でやった『コショウと宝石が等価交換されていた』のはこれか、なんて思ってましたね」
海外の大会で活躍したカードは高騰する。だから、まだ安い日本で買えるだけ買っておき、日本で値上がりするのを待つ。逆に、海外では時代遅れになりつつあるのに日本ではまだ高いカードは、海外で買う。そんなことを繰り返していたという。
「当時はスマホもないですし、通販のインフラもきちんとしていません。通販での買い占めは現実的ではなかった。海外から買うときは、同士を集めてインターネットでまとめ買いし、同士を集めて輸送コストを減らしてゆっくり買う。
国内は、都市部から地方へ仕入れツアーに行くのが主流でした。あとはゆっくり価格を見ながら、店舗やオークション、自分の身の回りで売るだけ。交通費や通販の航空機代を引いても、月に30万円くらいは収入になってましたね。まあ結局そのお金も全部カードゲームの遠征代や費用に消えるわけですが」


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