ベッドで朝の紅茶を飲みながら、電話一本で世界中の商品を注文する。居ながらにして海外事業に投資し、思い立てば外国旅行に出る。スマホを手にした現代の理想の生活ではない。ケインズが『平和の経済的帰結』で描いた、第1次世界大戦前のロンドンの富裕層の暮らしだ。
消費や金融の利便性だけ見れば、世界は100年以上前から「現代的」だった。今日のインターネット革命は、電話注文をネット通販に、海外投資をスマホ取引に、旅行の手配をオンライン予約に変え、便利さを極限まで高めた。暮らしは確かに便利になったが、生活は大きく変わったのだろうか。
アメリカ経済研究の大家ロバート・ゴードンが2016年刊(原書)の本書で描くのは、こうした便利さとは次元の異なる生活革命だ。1870年ごろの庶民は、遠くから家に水を運び込み、汚水や排泄物は外に運び出し、暖を取るために薪を割って燃やす、重労働に満ちた生活を送っていた。
その後、上下水道や電気、ガス、電話という社会ネットワークが家庭に届く。人々は水くみや暗闇、汚物、悪臭から解放され、衛生環境の改善によって感染症が激減し、乳幼児死亡率も劇的に低下した。
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