FIを達成したにもかかわらず会社を辞められない、あるいは辞めない選択には、蓄財の過程で培われた心理的ブレーキも作用しています。
一般的な会社員が現役中に資産数千万円から1億円を築き上げるには、ストイックな節約生活が不可欠です。無駄な支出を徹底的に削り、生活水準を上げず、生み出した余剰資金を投資に回し続けるという行動を、長期にわたって継続しなければなりません。
しかし、この行動パターンが染みついてしまった人が目標額を達成した瞬間から「これからはお金を取り崩して人生を楽しもう」とマインドチェンジするのは簡単ではないでしょう。
さらに、最近のインフレや円安が、「資産を減らしたくない」という防衛本能を働かせる可能性もあります。長年大切に育ててきた資産残高が日々の生活費で減っていくことに、耐えがたいストレスや恐怖感を覚える人も少なくないでしょう。その結果、「会社員を続けて給与収入を得ていれば、資産を取り崩さずに済む」という判断につながると考えられます。
会社を辞めると失うのは「給料」だけではない
会社への経済的な依存度がゼロになると、かえって会社員という立場のアドバンテージが腹落ちすることもあります。会社を辞めて失うものは給与だけではありません。
日本の社会は、いまだに会社員・公務員という属性の持つ信用力がモノをいいます。賃貸住宅の入居審査や不動産ローンの融資審査などでは、1億円の資産があろうと無職になった途端に難易度が上がります。所属する組織の信用が評価されるシーンは依然として多いのです。
筆者は会社員を辞めてフリーランスになったとき、初めて「会社の看板」の大きさを実感しました。会社員時代には、自分の能力や信用で仕事をしているつもりでも、実際には会社名が相手の安心材料になっていた部分があります。組織を離れれば、自分が何者なのかを一から説明し、信用を積み上げなければなりません。


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