また、RE後に多くの人が直面するのが、「社会からの孤立」です。会社を離れれば、仕事を通じて自然に維持されていた人間関係や社会との接点を、自分から意識してつくる必要が出てきます。会社というコミュニティが提供していた「自分の居場所」は、給料と同等かそれ以上に価値のある要素だったと、辞めて初めて気づくのです。
こうしたお金に替えにくいメリットも、FI達成後に会社員を続ける理由になり得ます。仕事そのものにやりがいを感じているなら、なおさらです。
もう一つ重要なのが、「辞めてから何をするのか」です。
「会社を辞めたい」という強い動機のある人が、必ずしも「辞めてから何をするか」まで考えているとはかぎりません。筆者の相談者にも「会社を辞めてもすることがない」と言っている人がいました。会社を辞めれば1日24時間がまるまる自分の時間になります。その時間をどう過ごすか、誰と関わるのか、何か新しいことを始めるのかを自分で決めなければなりません。
この点では、穂高さんのように実際にREを選び、その後も新たな活動を展開できる人のほうが、むしろ特殊ではないかと思います。FIが達成できて「いざ会社を辞めよう」と思っていても、辞めてから何をするかは白紙という人も多いはずです。
今の仕事が嫌いではなく、会社員として得られるものにも価値を感じているなら、FI達成後も会社員を続けるほうが賢明といえます。
FIの本当の価値は「辞めること」ではなく「選べること」
FIREという言葉ではREに注目が集まりがちです。しかし筆者は、FIREという考え方の中でも、大きな価値があるのはREではなくFIのほうだと考えています。
十分な資産を築き、経済的に自立した人間が手にするものは、いつでも辞められる状態で働き続けられるという精神的な自由です。理不尽な上司や職場環境に直面しても、「生活のためにここにしがみつかなければならない」という制約は弱まります。ストレスを最小限に抑えながら、会社員としてのメリットを享受できるポジションといえます。
FIREとは、働くことを否定する考えではないはずです。FIREの目的は、生活のための労働から解放されて、人生の主導権を持つことではないでしょうか。そうであれば、会社を辞めるかどうかにかかわらず、FIを目指す意味は大きいといえるでしょう。


※ログイン後、コメント入力が可能です。