同法案が憲法院で審理された経緯は、中道左派・社会党(PS)と急進左派・不服従のフランス(LFI)の国会議員60人以上が法案に反対し、憲法評議会に審査請求したためだった。そして「大革命の1789年人権宣言11条の思想・意見を自由に伝達する権利」は、成人だけでなく未成年者にも与えられるとし、基本的人権を制限する根拠として不十分とした。
さらにSNSの一律使用禁止は、必要性や比例性が十分立証されていないと指摘した。つまり、日常のコミュニケーションツールとしてのTikTokなどと教育・文化・共同制作を目的とする比較的リスクの低いサービスを一律禁止するのは憲法に合致しないとした。
また「14歳の子どもは、親が認めてもSNSを使ってはいけない」という規制は、親の教育権、親権を国家権力が奪うとの批判もあった。
さらに悩ましい問題は、SNSは毎年のように新たなサービスが登場し、その拡散力も凄まじいため、SNSの定義が極めて困難と指摘されている。
憲法院は結果的に「SNS規制そのものが違憲」なのではなく、子どもをSNSの危険から守る正当な目的に照らして、同法案は「全面禁止は過剰」との認識を示したわけだ。その意味で憲法院の違憲判断で同法が廃案に追い込まれたとも言い難い。
マクロンが重視する深刻な「いじめ」という現実
マクロン大統領は憲法院の判断を受け、ルコルニュ首相に対して27年春のマクロン政権任期満了までに新たな法案を準備するよう指示した。一貫して教育政策に熱心だったマクロン氏にとって成果を出したい法案だからである。実際、SNSの未成年者に対する悪影響は深刻を極めている。
国立統計経済研究所(INSEE)が15年に実施した調査で、中学生の28%が「学校でサイバーいじめの被害に遭ったことがある」と答え、これが自殺につながっているケースがある。23年1月、ヴォージュ県の13歳の中学生が自殺した。学校で同級生4人から継続的ないじめを受けており、自殺の原因とされた。SNSを通じたいじめも指摘された。
同年5月、北部パ=ド=カレー県の13歳の中学生の女の子が自殺した。学校内でいじめを受け、中心的ないじめ加害生徒が学校から最終的に退学処分になった後も、SNS上での侮辱・攻撃が継続した。帰宅してもSNSでいじめが続いた例として衝撃を与えた。
21年3月、パリ郊外で14歳の女の子が同じ学校に通う15歳の男女2人から暴行を受け、セーヌ川に投げ込まれて死亡した。検察は事件の前には、被害者のアカウントへの不正アクセスと、本人に関する私的な写真がクラスのSnapchatグループで拡散される事件が発生していた。計画的な犯行とみて2人を謀殺の容疑で司法は訴追した。


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