「私は、6年生が卒業するときに、『小学校の家庭科の教科書は、大人になるまで持っていてね』と必ず言うようにしています。それくらい大事な教科だと思っています」
家庭科が子どもたちに人気なのは、「本物」を扱うことにある。
「作ったものが使えたり、食べられたりする。『できた』『役に立った』という感覚があるのだと思います」(横山氏)。しかし、その「作って、できた」という実感を生み出すためには、教員側に相応の準備と技能が求められる。
家庭科の指導について、現場の教員は、自身の家庭科の知識不足、学習内容を子どもにわかりやすく教える難しさなどさまざまな困難を抱えている。中でも象徴的なのが、ミシンだ。
そんな「家庭科を教えるのが不安」という先生たちから注目を集めているのが、公立小学校の時間講師として家庭科を教えながら、Instagramで「ともこ先生 0から始める家庭科作り」を発信する小林朋子氏だ。フォロワーは1万人を超え、「明日の家庭科に間に合う」をコンセプトに、授業ですぐに使える教材や指導の工夫を紹介している。小林氏は、小学校教員からミシンの授業について相談を受けた経験がある。
「そもそも、先生自身がミシンを触る機会がないんですよね。今は家にミシンがある家庭も少ないですし。しかも、小学校の先生がおっしゃることで多いのは、学校にあるミシンが古くて、使い方も難しい。糸の調整も、どうしたらいいのかわからない。教える以前の段階で困っている先生がいるんです」
専科教員の不足、研修機会の減少
こうした状況の背景には、家庭科を専門的に学ぶ機会の減少もある。横山氏によれば、例えば東京都練馬区では区内65の小学校に対して家庭科専科の教員は数人程度。多くの学校では担任教員や時間講師が家庭科を担当し、家庭科部会や研修会も減っている。
「研修会を開いても、家庭科にはなかなか人が集まらない。でも、ミシンの講習会をやると、結構来るんです。必要に迫られているんですよね」


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