英語力の指標だけを見ると、さいたま市の成果は際立っている。では、子どもたちは英語を学ぶことをどのように感じているのか。「英語ができる子」を増やすだけでなく、「英語が好き」「英語を使ってみたい」と思える子どもをどう育てていくのか。そこにも、さいたま市の次の課題がある。
英語力をどう測るのか…「英語力日本一」の先にあるもの
ここで考えたいのが、「英語ができる」とは、そもそもどういうことなのかという点だ。文部科学省が行う「全国学力・学習状況調査」と「英語教育実施状況調査」では、英語力の捉え方や測り方が異なる。
「全国学力・学習状況調査」では、英語を正確に使うための知識や技能が問われる。単語のつづりや文法なども評価の対象だ。26年度からはCBT方式で実施され、中学校英語で、さいたま市は国が公表する「平均IRTスコア」の最上位層に位置している。
一方、「英語教育実施状況調査」は、英語教育に特化した調査で、英語力をCEFR A1レベル相当以上かどうかという観点から、外部検定試験の結果などを通して把握している。つまり、2つの調査は、同じ「英語力」を見ているようで、異なる側面を捉えている。
「正確に英語を使えることも大切です。一方で、多少文法に誤りがあっても、自分の伝えたいことを相手に伝え、やり取りを続ける力も大切です。理想は、その両方ができることですよね」
英語で「伝わる」力と、文法や語彙などを身に付けて「正確に伝える」力。その両方を育てていくことが、さいたま市の目指す英語教育だ。
さいたま市の英語教育を支えているのは、1つの特効薬ではない。9年間を見通したカリキュラム。標準より多い授業時数。複数の教員による指導。現場の教員も参加する継続的な研修。テスト結果を授業改善につなげる仕組み。そして、授業の中で子ども一人ひとりのつまずきを見取る教師の存在。そうした積み重ねの先に、88.9%という数字がある。
一方で、さいたま市も、その数字だけを成果とは捉えていない。英語が苦手な子どもをどう支えるか。そして、学年が上がっても「英語が好き」という気持ちをどう保っていくか。そこにはまだ課題が残されている。では、こうした取り組みの中から、他の自治体でも生かせることはあるのだろうか。
「特別なことをしなくても、まずは楽しい授業をつくることだと思います。子どもたちが『英語って楽しい』と思える授業にする。そのためには、複数の先生で子どもたちを見取ることも大切です。困っている子がいたら、すぐに声をかける。そういうことの積み重ねが大事だと思います」
「楽しい」は、単なる授業の雰囲気づくりではない。英語で何かを伝え、「伝わった」「できた」という経験が、次に「もっとやってみたい」という気持ちにつながっていく。そのためには、間違いを恐れずに英語を使える場をつくり、つまずいた子どもを置いていかないことが欠かせない。
英語力を高めることと、英語を好きになること。その2つは別々のものではないのかもしれない。「英語ができる子」を増やすだけでなく、「英語を使ってみたい」「誰かに伝えてみたい」と思える子どもを増やす。88.9%という数字の先に、さいたま市が目指しているのは、そんな英語教育の姿なのだろう。




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