Mさんの場合は筆者のカウンセリングを活用し、まずは怒りや無力感を言葉にし、吐き出すことができた。そうして気持ちが軽くなると、次の一歩を考える余裕が出てくる。
結局、Mさんは自分と部下の負担を軽減するために、社長の新たなアイデアを少し寝かせておくことにした。結局、SNSでの動画マーケティングの話が、その後話題に上ることはなかったという。
「社長の指示は絶対だからすぐにやらなければ、と思い込んでいましたが、すぐにやらないという選択肢もあった。前からそうしておけば、もっと楽に過ごせていたと思います。自分と部下のために、時間と知恵をうまく使おうと思います」
同族企業のなかで生き残るには
トップダウンによる圧倒的なスピード感は、同族企業によく見られる強力な武器だ。しかし、それが単なる思いつきや公私混同で終わってしまえば、優秀な人材から順に去っていき、組織は弱体化してしまうおそれもある。
何より、管理職が「寝かせる技術」で自分や部下を防衛しなければならない状況は、すでに組織の危険信号といえる。
もちろん、社長自身がこのことに気づき、変わるのが理想だ。社長が意識的に社員の本音に耳を傾ける「受容の姿勢」を持ち、トップの決定力をもって現場の声を活かす。この両輪が揃って初めて、同族企業は時代を超えて生き残る本当に強い組織へと進化できると、筆者は考える。
一方で、社長が変わるのを待つだけでは、Mさんのような管理職は救われない。できる限りの防衛策を取り、自分と部下を守る。それでもダメなら職場を変えるのも、自分を守るための選択肢の1つだろう。


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