「AIを使ってから、帰りがかえって遅くなった気がする」
そう漏らす人が増えている。効率化のためにAIを導入したはずなのに、なぜか残業時間が減らない。それどころか、AIを使いこなしている人ほど、残業時間が長いという調査結果まで出ているのだ。
今回は、この一見矛盾した現象がなぜ起きるのか、そして「AIデスキリング」という新たなリスクについて解説する。AIを積極的に活用しているビジネスパーソンはもちろん、AI導入を推進する経営者や管理職にも、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
AIを使うほど、残業が増えるという矛盾
2026年8月、『経済財政白書』がある調査結果を紹介し、話題になった。パーソル総合研究所が実施した調査によると、AIの活用によって対象業務の作業時間は平均16.7%減少した。しかし、業務時間全体を実際に短縮できたと答えた人は、25.4%にとどまったのだ。
さらに気になるのは、生成AIを週4日以上使う「ヘビーユーザー」ほど、残業時間が長い傾向にあるということだ。作業は確実に効率化されているのに、それが残業削減という結果につながっていない。この矛盾には、いくつかの原因が隠れている。
まず疑ってほしいのは、AIによる業務効率化が、次のどちらのパターンで起きているかだ。
(2)これまでやっていなかった業務を、新たに実行してしまった
(1)であれば、間違いなく良いことだ。業務効率化につながるだろう。しかし、実際には(2)のパターンが非常に多いのではないか。
生成AIの利用で、多くの人が真っ先に実践するのが、文章作成や要約だ。会議や商談の内容を音声で記録し、AIに議事録としてまとめさせる。これは確かに便利だ。実際にやってみれば、多くの人がその手軽さに驚くだろう。
「本来2時間かかるところが、20分でできた」
と喜ぶ声をよく耳にする。


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