「AIで効率化したぞ、よし次の仕事も引き受けよう!」
この発想が続く限り、いくら作業時間を短縮しても、労働時間全体は一向に減らない。実際に、あらかじめ「時短した分をどう使うか」を決めていた人だけが、残業削減に成功している。パーキンソンの法則に抗うには、意識的に
「この時間は空けておく」
「定時になったら帰る」
と決めておくしかない。放っておけば、時間は必ず別の仕事で埋め尽くされてしまうからだ。
AI活用は手段であり、目的ではない。この原則を見失うと、便利な道具を手に入れたはずなのに、かえって忙しくなるのだ。
試行錯誤を飛ばすと、使えないものが生まれる
私自身、現場でこの問題を痛感した出来事がある。
あるお客様から、経営計画についてアドバイスがほしいという相談を受けた。事前に伺うと、外部環境分析としてPESTや5フォース分析、内部環境分析としてバリューチェーン分析を実施し、その上でSWOT分析も行ったという。しかも、それらはすべてAIによって図表にまとめられ、資料として送られてきた。
これはレベルが高いと思った。しっかりと情報収集をしてから打ち合わせに臨んだ。しかし、実際に話してみると、先方の社長や経営陣は、その分析のやり方も、目的も、まったく理解していなかった。ただAIが出力した分析結果だけを見て発言するため、話がまるでかみ合わない。
経営分析を行うためには、かなりの試行錯誤が必要だ。知識だけでは不十分で、経験がものを言う。データの背後にある文脈や、その会社の歴史も読み解く必要がある。何より、現場で働く人たちの性格や思い、スキルや思考にも大きく左右される。絵に描いた餅にならないよう、その会社に合った計画を立てるには、表面的で当たり障りのない情報だけでは、決してわからないのだ。
こうした事情を説明しようとしても、「そんな面倒なことは不要だ。AIがこう分析しているのだから、この計画で問題ないはずだ。コンサルタントのお墨付きさえあればいい」と言われてしまった。


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