このブレイクスルーの根底にあり、私が現在も最も重視しているのが、『たたき台の教科書』で詳しく説明している、「仕事の構造方程式」です。
現状 × 打ち手 = 期待する成果
すべての仕事は、この構造で成り立っています。そして、たたき台を作ることの本当の目的は、単に資料を作ることではなく、「期待する成果を出せそうな打ち手の案を決めること」です。
多くの人は、この方程式の「現状」と「期待する成果」をすっ飛ばして、いきなり「打ち手(アイデア)」を考えようとしますが、これは致命的な間違いです。
• 打ち手: これから実施する予定の行動。
• 期待する成果: いつまでに、誰が、どうなっている状態を目指すのか。
なぜ「ひらめき」に頼ると失敗するか
数学の方程式をイメージしてみてください。「打ち手」という変数(X)の答えを求めるためには、まず「現状」と「期待する成果」という定数を固める必要があります。定数が固まっていなければ、いくら画期的なアイデアを出しても、式を解くことはできません。
仕事の構造を理解すると、なぜあなたの提案が通らないのか、なぜ職場の会議であなたと上司の意見がいつまでも噛み合わないのかが見えてくるはずです。「考えが浅い」と言われるのは、あなたの発想力や努力が足りないからではありません。前提(定数)がズレているのです。
だからこそ、次に「たたき台を作っておいて」と言われたら、いきなりパソコンを開いて打ち手のアイデアを考え始めるのはやめてください。まず「何がどうなれば成功なのか」「現状はどうなっているのか」。この2つの定数を、依頼した相手以上の解像度で深掘りする。これだけで、返ってくる言葉は「考えが浅い」から「なるほど、それで?」に変わります。
あのとき先輩が30分で書き上げたメモも、特別なひらめきの産物ではなかったのだと、今ならわかります。先輩は当たり前のように、現状と成果を先に押さえていた。差はそこにあったのです。
たたき台の質を決めているのは、頭の良さでも、経験の長さでもありません。仕事の構造を理解しているかどうか。ただ、それだけです。


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