あけみは母の教えに従い、「迷う=相性が悪い」と信じて生きてきた。しかし実際の結婚は「迷いながら信頼を築いていく営み」と言っても過言ではない。母親の教えは、娘を守りたいという深い愛情から生まれたものだったのだろう。
しかし、その善意の結果が、娘から恋愛を経験する機会と、「迷いながら人を愛する力」を奪ってしまったのである。
「理想の家族」が相手選びの障壁に
かよ(35歳、仮名)は、家族仲の良い家庭で育った。
両親を心から尊敬し、33歳の妹とも仲がいい。休日には家族でゴルフへ出かけ、長期休暇には家族旅行を楽しむ。オリンピックやワールドカップの時期になると、家族全員が食卓を囲み、テレビの前で大歓声を上げながら応援する。そんな時間が、かよにとって「家族」の原風景だった。
だからこそ、結婚相手にも同じ価値観を求めていた。
「結婚するなら、私の家族にも自然に溶け込んで、一緒にテレビの前で応援してくれるような人が理想です」
入会面談のときに、笑顔でそう話していた。
なので、お見合い相手が「家族とは距離を置いています」「両親とは価値観が合わず、あまり交流がありません」「兄弟とは仲良くしていません」と言ったとたん、その瞬間に結婚相手の候補から外してしまっていた。
しかし、家庭環境に恵まれなかったからこそ、「自分は温かい家庭を築きたい」と強く願う人もいる。むしろ、幼少期に寂しい思いをした経験があるからこそ、自分で築いた家族を何より大切にしたいと考えるのではないだろうか。
そんなとき、かよは37歳のよしふみ(仮名)と出会った。有名大学を卒業し、年収1000万円を超える士業の男性で、人柄も誠実だった。
仮交際は順調に始まった。ところが、その時期はちょうど彼の繁忙期。仕事が終わってからの遅い時間に会うことが続き、決まっていたデートも急な仕事で日程変更になることが何度かあった。そうしたことが続き、かよはよしふみに交際終了を申し出た。


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