そこで台湾交通部(日本の国土交通省に相当)は高速鉄道の延伸や在来線の改良で、各区間の所要時間を90分程度に収めたい考えだ。台湾をぐるりと1周する非常にアグレッシブな構想である。台湾交通部の陳世凱部長は、セレモニー後の囲み取材で「私たちはこの計画を推進しており、だからこそ今回の宜蘭延伸が重要となる」と語った。
そして日本の鉄道業界にとって最も重要な商機は、12編成の納入後に控えている。史董事長はセレモニー終了後、今後2〜3年でN700STと既存700Tの2形式を同時に運用しつつ、「開業時から稼働する既存34編成の全面的な更新(リプレイス)の評価に入る」と明言した。
車両置き換えは超巨大ビジネスに
12編成で1240億円規模であれば、34編成のリプレイスは3000億円を超える超巨大ビジネスとなる。しかも、北東部の宜蘭や南部の屏東への延伸が実現すれば、さらに多くの編成が必要となるのは確実だ。ただ、シーメンスなど海外のライバルたちも受注機会を虎視眈々と狙っているのは間違いなく、日本勢が無条件で受注できるとは限らない。
「天災は無情なれど、台日に愛あり」――。史董事長はセレモニー冒頭でこう語り、熊本地震への義援金を表明した。また、出席した故・安倍晋三首相の妻、昭恵夫人が「晋三さんは台湾は家族ですと話していたので、今回は日本ではなく台湾の一員として参加させていただいたと思っている」と語ったように、日台の政治・感情的絆は揺るぎない。
しかし、ビジネスの最前線においては、価格と仕様をめぐる冷徹な攻防がつねに繰り広げられているのである。

