それに忠実なのは理解できるが、しかしヒトハとフタバは映画のメインキャラクターといっても差し支えない存在だ。映画ではきちんと姿が描かれるサプライズがあってもおかしくないと考えていたのだが、それは一切なく基本原作通りに描かれるのである。
この物語の結末はビターエンドであり、それゆえにヒトハとフタバをきちんと描けなかった可能性もある。かわいいキャラクターとして描いてしまうと、その後があまりにもつらいからだ。
ともあれ、属人性の強い原作を最大限活かすための映画なのは間違いないだろう。ナガノ氏は脚本・総作画監督として関わっており、原作者としての意見を通しやすかったと考えられる。
カオスで多様なナガノワールドが幅広い層を惹きつける
このように『ちいかわ』の世界は、さまざまな要素を取り込んだ独特のナガノワールドが展開されている。興味深いのは、それらがマスコットキャラクターのかわいさを表現することに集約されている部分だ。
なぜ、ちいかわたちがつらい労働をしなければならないのか? それはちいかわたちが苦労したり泣く姿もかわいいし、頑張ったがゆえにむくわれる姿もキュートだからだ。
どうして映画ではちいかわにつらい選択を迫るのか? それは、ちいかわの友達を思う気持ちが強いことを描くためである。そしてマスコットキャラクターであろうとも、生き物である以上は決定的な選択を迫られることがあると知らしめるためだ。ゆえに、ちいかわは友達思いのかわいい生き物として観客の目に映る。
『ちいかわ』はナガノ氏が興味を持つものを集めた独自の世界になっており、カオスともいえる。しかし「小さくてかわいいマスコットキャラクターのための世界を作る」という芯はきちんと通っており、それゆえにブレることはない。
ナガノワールドは本当にさまざまな要素を取り込んでおり、この記事で取り上げなかったものからも影響を受けているだろう。そのどれかが観客の興味を惹く構造になっており、それゆえに幅広い層に受けて大ヒットとなっているのだ。


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