イオンの会見では、社長自らが作業服姿で会見に臨んだことも「誠実に事態の対応にあたっている」ということを印象づけた。
一方、従業員が亡くなったテナント企業側は、情報公開が遅れたり、説明が限定的だったりしたため、「事態を矮小化している」「責任逃れをしている」と受け取られてしまい、批判を浴びてしまった。
危機時には、情報を出さないこと自体がメッセージになる。沈黙によって疑念が拡大すれば、企業への信頼をさらに失ってしまうことになる。今回は、デマが拡散し、無関係のテナント企業が批判を受けるといったことも起きている。デマや不当な誹謗中傷を防ぐためにも、公式的な情報発信は必要不可欠なものなのだ。
ただし、迅速さだけを追求すればよいわけではない。不確かな情報を断定すれば、後に訂正が必要となり、さらに信頼を損なってしまう。求められるのは、「確認できた事実」「確認中の事項」「今後の対応」を分けて、継続的に説明する姿勢である。危機管理広報は、謝罪文を一度発表して終わる作業ではない。事態が収束するまで更新を続ける必要がある。
「最悪に備える」ことは「悲観すること」ではない
古代ローマの哲学者セネカの言葉として、「最善を願いながら、最悪に備える」という考え方が知られている。
最悪の事態を想定したうえで、過度に悲観的になることなく、平時には冷静に事業を続け、有事にはためらわず行動を切り替えることが重要だ。

