人は自分に都合の悪い情報を過小評価し、「これくらいなら大丈夫だろう」と考えやすい。組織も同じである。過去に大きな事故がなかった企業ほど、非常時にも従来の判断を続けてしまう。だからこそ、危機が起きていない時期に、危機への備えを具体化しなければならない。
同じ状況が起きたとき、「人命を最優先する指示」を即座に出せるか
今回の事故から企業や組織が学ぶべきことは、特定企業の判断を非難することだけではない。
自社で同じ状況が起きたとき、経営者は人命を最優先する指示を即座に出せるのか。店長や管理職は、売り上げや資産を放棄して部下を避難させられるのか。従業員は、上司の返答を待たずに危険から離れることを許されているのか。それらを一から洗い出し、確認することだろう。
危機は、組織が掲げる理念と、実際に優先しているものとの差を容赦なく暴く。平時に利益を追求することは企業の役割である。しかし、有事になれば、その論理をいったん捨てなければならない。人命を守れない企業は、長期的には事業も信用も守れないからである。
いざ自分が当事者になったとき、平時の頭を捨て、有事の判断へ切り替えられるだろうか。今回の事故は、すべての経営者、管理職、従業員に対して、その問いを突きつけている。

