もちろん、爆発そのものの原因と、個々の企業の指示との因果関係は慎重に検証されなければならない。また、現時点では事故の責任を断定することはできない。
しかし、危機が発生した後の意思決定という点においては、イオン側と一部テナント側の対応が対照的だったことは否定できない。
イオン側は来訪客と従業員の避難を優先し、結果として大多数の人命と安全を守った。対して一部テナントでは、売上金や店舗運営といった平時の業務が、非常時にもなお判断基準として残っていた。ここに、今回の事故が社会へ突きつけた本質的な問題がある。
「有事にも平時の意思決定を続けた」ことの問題
従業員に館内に戻るように指示をしたハビタに対して「人命より売り上げを優先した」といった批判が殺到している。しかし、問題の核心はそれだけで捉え切ることはできない。より本質的なのは、「有事」にもかかわらず、「平時」の意思決定を続けてしまったことにある。
日常の平和な状態を「平時」、非常事態が起きている状態を「有事」と言うが、企業の危機管理においても、それぞれの状況において、まったく異なる優先順位が存在する。
平時であれば、売り上げや利益を確保し、店舗を正常に運営し、商品や現金を適切に管理することが求められる。従業員が責任感を持ち、最後まで業務を遂行することは、通常であれば高く評価される行動である。
ところが有事においては、その評価軸を瞬時に切り替えなければならない。地震、火災、爆発、豪雨、感染症など、生命や身体に危険が及ぶ状況では、業務の継続よりも人命と安全の確保が優先され、売上金、商品、設備、顧客データといった、平時に重視される要素の優先順位は下がる。

