この時期の子どもが「どうせ僕なんてダメだ」と口にしたとき、その言葉は単なる弱音ではありません。その子が必死で紡ぎ出した「自分自身の物語」なのです。
ところが親は、それを聞いた瞬間に「そんなことないよ」と否定する。本人にとってはリアルな真実を、一言で葬り去られる――これは子どもにとって、自分の物語を親に"強奪"される体験なのです。
もし、あなたが職場で大きな失敗をして落ち込み、配偶者に「今日はほんとにダメだった……」と打ち明けたとき、「そんなことないよ! 次があるから!」と即座に返されたら、どう感じるでしょうか。
一瞬、励ましを嬉しく思うかもしれませんが、それもすぐに消え、また元の気持ちに戻ってしまうのではないでしょうか。
または、「この人は、私の気持ちをわかってくれない」――そう感じて、口をつぐむかもしれません。子どもの場合は、さらにそれが顕著です。
「語り方」が人生を決める。ナラティブ・アプローチとは
ここで、心理学やカウンセリングの分野で注目されている「ナラティブ・アプローチ」をご紹介します。ナラティブ(narrative)とは「物語」「語り」の意味。このアプローチの核心は、次の一点に集約されます。
人は、起きた出来事そのものではなく、その出来事を「どう語るか」によって人生が決まる。
同じ「テストで30点を取った」という出来事でも、語り方で未来は真逆に分かれます。
出来事は同じですが、語り方でその後が異なります。そして、子どもがどんな物語を紡ぐかは、日々の親との対話によって決定的に形づくられていくのです。

