なぜ、そこまで徹底されていた中で死者が出てしまったのか。客の避難が完了した後、テナント従業員たちの一部は館内に戻り、爆発に巻き込まれてしまったという。
29日に行われたイオンの吉田昭夫社長やイオンモールの大野惠司社長らの会見によると、「一度避難したら絶対に戻らないように」というルールが示されていたという。これは他社のSCでもそうだろう。
なぜ従業員は、危険な館内に戻ってしまったのか?
ではなぜ、彼らは危険な現場に引き返してしまったのか。筆者は、その背景に「郊外型モールならではの事情」と、従業員たちの「真面目な責任感」があったと分析している。
最大の理由は、郊外型モールの従業員の多くが「車通勤」であるという現実だ。地震発生直後、従業員たちは客を連れてすぐに外へ避難したが、車の鍵や財布、免許証などの貴重品は店舗のバックスペースに置いたままだったという人もいただろう。
帰宅指示が出たとしても、車の鍵がなければ自分の車を動かすことはできず、財布がなければ身動きが取れない。そのため、必要な荷物を取りに戻らざるをえない状況に置かれていた従業員もいたものと考えられる。
もう1つの要因が「現金の管理」である。一般にSCの各店舗には、毎朝セットする「釣り銭」があり、その額は5万円から、大きなレジでは10万円程度になることもある。
このお金はテナント側が用意したものだ。なので従業員は営業終了後、当日の売上金を入金する「入金機室」に隣接した、各店舗別に施錠できる「釣り銭金庫」に釣り銭を入れて、退館する手順になっている。
地震によって翌日からの営業が休業となり、真面目な従業員ほど、「レジを締めなくては」「お金を安全な場所に移そう」と考え、館内に入ってしまうことが考えられる。

