使い勝手における設計思想の一貫性も見逃せない。
ヤリスのスイッチ類の配置はほかのトヨタ車と一貫性があり、はじめて乗る人でも直感的に操作できるよう工夫されている。ステアリングスイッチも凹凸がしっかりとあり、視線を前方に向けたまま迷わず操作できる。この設計思想は、もちろん最上級モデルであるクラウンにおいても、一貫して価格帯を問わずトヨタ車全体に流れる哲学と言ってよいだろう。
もちろん、両車の立ち位置には明確な役割分担がある。ヤリスは「パブリカ スターレット」から連綿と続く、小さくて安く、それでいて楽しいクルマという系譜を受け継ぐ存在だ。コストをかけられない末っ子ゆえに、上位モデルのお下がりとなる機構やアイテムを採用することになり、結果的にワンランク上の完成度を得ている面もある。
対してクラウン スポーツは、セダン離れが進む時代の中で、クロスオーバー、セダン、スポーツ、エステートという4つのボディタイプへと大胆に舵を切った新世代クラウンの一角を担う存在であり、トヨタが最先端の技術とコストを投入できる旗艦としての役割を今なお担っている。
トヨタの一貫した設計思想の先にあるもの
だが、両者を貫くのは「クルマは移動の道具であると同時に、運転して楽しいものであるべきだ」という一貫した思想だ。そのためにトヨタのクルマは「一緒に運転してサポートしてくれる」意思を感じる。「自動でやってくれる」のではなく「難しいところは手伝ってくれる」感覚だ。
それは、末っ子であろうと長男であろうと変わらない。むしろ、価格や車格が離れているからこそ、その根っこの部分に共通のDNAが流れていることが際立って見えてくる。トヨタが目指しているのは、特定の価格帯やユーザー層だけを満足させるクルマ作りではなく、どのクラスに乗っても「安心」と「楽しさ」を同時に感じられる、一貫したブランド体験の構築なのではないか。ヤリスとクラウン・スポーツ、この対照的な2台を乗り比べてみて、そうした確信を持つに至った。

