警察庁の統計資料の「都道府県別山岳遭難発生状況」には、ワースト10のなかに、長野県や富山県、山梨県、北海道、群馬県などに交じり、東京都、神奈川県、兵庫県が入っている。
この3つの都県に標高の高い山はないが、いずれも人気の高い低山エリアを擁している。
東京都には、人気の高尾山のほか、西部の山岳地帯・奥多摩がある。最高峰の雲取山の標高は2017mと中級山岳の範疇になるが、東側には500~1000m前後の低山がたくさん連なっている。
その奥多摩は地形的に急勾配の斜面や険しい谷が多く、転滑落事故が多発している。また、エリアの大半は展望のきかない樹林帯に覆われており、作業道も入り組んでいるため、道迷い遭難も多い。
神奈川県には北西部の丹沢と南西部の箱根の2つの山岳エリアがあるが、初心者から上級者まで多くの登山者が訪れるのが丹沢山塊である。
標高的には1500m前後の山が多い中級山岳となるが、首都圏からのアクセスがよく、人気ルートは整備も行き届いているため、“手軽に行けるハイキングの山”というイメージが強い。
ただし地形は複雑で、主要な尾根から無数の支尾根が派生し、また大小多数の沢も入り組んでいる。作業道や獣道も交錯しているため、場所によっては道迷い遭難が起きやすい。
それにも増して圧倒的に多いのは下山中の転倒・滑落事故だ。人気ルートのなかには長く急な下りが続くところもあり、疲労による転倒事故や滑落事故が多発している。
また単に疲労で行動不能に陥ったり、下山中に日没となって進退きわまってしまったりという事故も目立つ。
931mの六甲山では道迷い遭難が多発
兵庫県の代表的なハイキングエリアとして知られる六甲山地は、神戸市の背後にそびえる東西約30キロの山並みで、最高峰の六甲山(931m)を中心に多くのハイキングコースが整備されている。
神戸市街から近く、山麓は宅地となっているため、市民の憩いの山として、四季を通じて多くの人々が訪れる。
その一方、登山道が毛細血管のように張り巡らされていることに加え、尾根や谷も無数にあることから、道迷い遭難が非常に多い。過去には単独行の登山者が行方不明になったまま発見されずにいるという事例も報告されている。
山地の大半は花崗岩(かこうがん)で成り立っているため、地面が滑りやすく、転倒や転滑落事故も少なくない。そのほか、疲労やヘッドランプの不備による事故も散見する。

