この残りのすべての要因を集めたものが遺伝子という単一の要因と似たような比率で幸せに影響を及ぼす。
けんかにたとえるなら、数十対一のけんかが引き分けになるということ。1人のやから(遺伝子)のパンチがどれほど強力かわかるというものだ。
遺伝子が同じなら?「双生児」の幸福度
一卵性双生児は遺伝の力を端的に見せてくれる例だ。
彼らの遺伝子の類似性は100パーセント。ところが、まれに生後それぞれ別々に養子に出され育つ場合がある。
心理学者にとっては研究の価値が高いケースだ。完璧に同一の遺伝子を持ちながら異なる環境で成長したからだ。双子研究を専門にしている米国のミネソタ大学では、こうしたケースを探して多くの研究結果を出してきた。
中でも特に有名な事例が、ジェームス1とジェームス2の双子だ(Tellegen, 1999)。
この2人は生後3週間で別々の家庭に養子に出され30年以上暮らした。ミネソタ大学から研究への参加を求められるまで、自分が双子だということも知らないままだった。
しかし、互いの存在すら知らないまま生きてきた2人の類似性は、驚くほどだった。
離婚した前妻の名前(リンダ)から息子の名前(アラン)、ペットの名前(トイ)、職業(保安官)、一番嫌いなスポーツ(野球)、好きなビール(ミラー)と休暇で一番よく出かける場所(フロリダの特定のビーチ)まで完璧に一致した。
こういう一卵性双生児の幸福度指数はどうだろうか?
こちらも、もちろん非常に似ている(Weiss, Bates & Luciano, 2008)。遺伝の力は大きい。
しかし、匂いも形もないこの遺伝的な要因を日常で見抜くのは簡単じゃない。
だから、先天的に幸せな性向を持って生まれた人の外的「症状」に注目が行くわけで、それが幸せの要因だと錯覚するケースが多い。しかし、せきは風邪の症状であって原因ではないのだ。


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