「漢字の語源を見てください。『怒(る)』は自分の感情を表現した言葉であり、『相手に、何を、どのように伝えるか』は語義に含まれていません。子どもは、親に怒りをぶつけられても、恐怖や萎縮、反発といった感情を抱くだけで、怒りの理由は理解できない。就学前の子どもの場合、言われたことだけをやる、応用が利かない子どもに育つ可能性が高いとも言われています」
「怒(る)」に似た言葉「叱(る)」は、「相手に何かを伝える様子」を語源とし、教育・指導を目的とする行為だ。ただ近年の研究では、「叱る」もネガティブな感情体験で相手をコントロールすることにつながりかねず、叱られる側は苦痛から逃れるために行動を変えるだけで、本当の意味での学びにならないという指摘もある。
シンプルで分かりやすい表現で子ども伝える
「『怒る』でも『叱る』でもなく、子どもの発達段階に即した『言葉』を使って物事を具体的に伝えることが重要です。就学前の子どもの場合、ネガティブ表現ではなくポジティブ表現を、あいまいな表現ではなくシンプルで分かりやすい表現を使う。親になったからといって自然にできるわけではなく、段階を踏んだ“練習”が必要です」(鈴木教授)
たとえば、5歳の我が子・ハルトが、お友だち・ソウタ君が遊んでいたおもちゃの車を許可を得ずに取ってしまった場合。「勝手に取っちゃいけません!」と感情的に怒るのは避けたい対応だ。このケースの望ましい声かけの一つは、「ハルト君、ソウタ君に『貸して』と言わずに取っちゃったね」。
「『いけません!』では、してはいけないことは伝わりますが、ではどうすればいいのかが子どもには伝わりません。感情的にならず、シンプルに行為を言葉にするだけで、子ども自身が次の行動を理解できます」(同)
こうしたコミュニケーション術は専門的に「ペアレント・トレーニング」と呼ばれる。発達心理学の研究では、親子の会話のうち褒め言葉が8割、修正する言葉が2割というバランスが良いとされており、ポジティブな言葉で子どもの行為を表現し、それに慣れたら褒めることへとつなげていくのがいいという。
思春期の子どもには、さらなる工夫が求められる。
「就学前のペアレント・トレーニングの土台を思春期の子どもに応用することは有効ですが、親の立ち位置がそのままではいけません。就学前の『管理者』から、小学生の学齢期を経て思春期に入ったら、子どもの自立を支える『応援者(サポーター)』へと徐々に移行させる必要があります。“上から目線”は論外で、子どもに伴走し応援していくようにするのです」(同)

