山中啓之市議も、「オーナーとの直接賃貸借契約ではなく、伊勢丹松戸店を1枚通して契約することは、伊勢丹松戸店の延命策以外に合理性がない」と指摘した。
④市も難しい判断を迫られていた
ここまで見ると、市は十分な条件の検証をしないまま、高額な賃料を受け入れようとしたようにも見える。しかし、市に求められていたのは、単純に伊勢丹を支援するか、見放すかという判断ではなかった。
支援案が否決される前日の2017年9月6日、副市長は自ら伊勢丹松戸店を訪れ、店長から館内のテナントなどに動揺が広がっている状況を聞いていた。翌日の総務財務常任委員会では、市側も十分な説明ができなかった事情を明かしている。
「非常に時間のない中で市としても判断をせざるを得なかった」
「三越伊勢丹ホールディングス本部から情報が来ないということが一番苦慮いたしました」
実際、市が議会に本格的な説明を始めたのは8月上旬だった。9月定例会の開会は8月29日であり、議会は約2週間という短期間で、総額約21億円に及ぶ支援策の是非を判断することになった。
なぜ、これほど時間がなかったのか。それは、伊勢丹側が売り場縮小の情報について「取引先や従業員の労働組合との協議が調わないうちに情報が漏れては困る」として、8月下旬まで公表しないよう市に要請していたためだ。市は6月定例会中に議会へ事前説明を行いたいと申し入れていたが、この要請を受けて実現できなかった。
つまり、市は存続に向けて動いていたものの、伊勢丹側から得られる情報は限られ、議会への説明に使える時間もほとんどなかったのだ。

