この時点では行政も議会も、伊勢丹松戸店の存続を目指す方針で一致していた。ところが、そのわずか9カ月後、市議会は市の支援策を全会一致で否決する。伊勢丹を支援する方針を示していた市議会が、なぜ売り場の借り上げ案には反対したのか。
③家賃は相場の2〜3倍だった
市議会が支援案に反対した最大の理由は、市が負担する賃料の高さだった。
伊勢丹が市に示した条件は、5階以上を返却して店舗を地下1階から4階までに縮小し、そのうち4階の約506坪を市が借りるというものだった。賃料は坪当たり月額2万8000円。年間では約1億7000万円となり、これに駐車場負担金約3000万円が加わる。
議会で問題となったのは、市がビルの所有者から直接借りるのではなく、伊勢丹を介して借りる契約だったことだ。
総務財務常任委員会でこの点を追及した二階堂剛市議は、市が市役所周辺で借りている事務所の賃料を比較対象として示した。2棟は坪当たり約1万3100円、別の1棟は約7455円だった。一方、伊勢丹が提示した賃料は坪当たり2万8000円で、市が借りている事務所の2〜3倍以上の水準だ。
これに対し、市側は「商業施設としては妥当な範囲」と説明。実際、委員会ではアトレ松戸が坪当たり約3万5000円、柏高島屋が約3万円という賃料も示されている。
ただし、議員らが問題視したのは、商業施設として高いか安いかではない。なぜ市が、商業施設の賃料水準で借りる必要があるのかという点だった。
さらに、市は伊勢丹がビルの所有者へ支払っている賃料を把握していなかった。中田京市議が「伊勢丹が所有者に支払う賃料と、市が伊勢丹に支払う賃料との差額はいくらか」と質問したのに対し、市は「守秘義務の関係があり、明らかにすることはできない」と答弁している。

