マッチングの入試という言葉を、私はよく使います。就活における企業と学生のマッチング、あるいは恋愛におけるお互いの相性に近い構造です。
これがなぜ、受験生にとって苦しいのか。理由は、シンプルです。努力の方向を、自分で決めなければならないからです。
一般入試であれば、「数学の微積を強化する」「英語の長文をあと20題解く」といった、努力の方向性が明確に存在します。しかし推薦入試では、「この学部が求める人物像に、自分をどう寄せていくか」という、正解のない問いに向き合い続けることになります。
自分の関心を掘り下げる。社会課題との接続を探る。学部の教育方針を読み込む。教授の研究テーマを追いかける。志望理由書を書いては書き直し、面接練習を重ねる――。この一つひとつには、「あと何時間やれば大丈夫」という目安が、ありません。
それでも、推薦入試を勧める理由
ここまで、推薦入試の苦しさばかりを書いてきました。では、なぜ私は、それでもこの入試を多くの高校生に勧め続けているのか。
理由は、この入試で身につく力が、大学入学後の人生のあらゆる場面で効き続けるからです。自分の関心を言語化する力、社会と学問を接続する力、模範解答のない問いに向き合う力――これらは、そのまま大学のゼミでも、就活でも、社会に出てからの仕事でも問われ続ける力です。
推薦入試の受験生は、模試という地図を持たずに、自分の足で山を登ることを求められます。それは確かに苦しい経験ですが、その苦しさを経た子は、自分の言葉で自分の進路を語れるようになります。
「推薦入試は楽な入試です」というのは、正確ではありません。正しくは、推薦入試は、一般入試とはまったく違う種類の難しさを持つ入試です。この違いを理解したうえで、覚悟をもって選び取ってほしいと思います。
模試がないという残酷さの向こう側には、確かに、その子だけの合格が待っています。


