こうした口コミの積み重ねによって、ヤケーヌは農業用品の枠を超え、幅広い世代に支持されるブランドへと育っていった。
いまや、ヤケーヌのフェイスカバーは同社のオリジナル商品事業の半分以上を占める主力商品となり、今年の上半期の売り上げは前年同期比164.1%超と好調を維持している。
「大ヒット」を目指さない
ここまで話を伺う中で、ひとつの違和感を覚えた。
シリーズ累計400万枚を超え、会社を代表するブランドへ成長したにもかかわらず、村瀬氏は取材中、何度も「大ヒット商品を目指しているわけではない」と繰り返すのだ。
「私たちはブルーオーシャンを見つけることを大切にしています。市場の規模だけを見れば、小さいかもしれませんが、困っている人がいて、その悩みを解決できる商品なら、長く使っていただけます。爆発的に売れる商品を一つ作るよりも、そういう商品を一つひとつ積み重ねていきたいんです」
ヤケーヌは、そうした考え方から生まれた商品の一つだ。
一方で、ブランドとして認知が広がった今、その価値を生かした商品展開も加速している。
同社が目指しているのは、「フェイスカバーのヤケーヌ」ではなく、「UV対策といえばヤケーヌ」というブランドの確立だ。
その一環として、近年はアームカバーやパーカーなどへと商品ラインアップを広げている。いずれも想定を上回る反響を集め、パーカーは完売、アームカバーは楽天市場のデイリーランキングで1位を獲得することもあるという。
最後に、海外展開についても尋ねてみた。世界的に紫外線対策への関心が高まるなか、筆者自身も台湾で暮らしていた頃、日本以上に強い日差しに悩まされた経験がある。ヤケーヌのような商品は、日本だけでなく海外でも需要があるのではないかと感じたからだ。
「最近、中国ではオンラインを中心に直接販売を始めました。アメリカでもAmazonを通じて、販売しています。少しずつ増えていってるかなっていうところですけれども、われわれとしても、マーケティングしながらどんどん深掘りしていければとは思っています」
現時点では、海外向けの積極的なマーケティングには着手できていないという。それでも緩やかに売れ行きが伸びているのは、紫外線への悩みと、それに応える商品の実用性に国境がないからだろう。
「大ヒットを目指さない」という言葉通り、仕掛けられたブームではないからこそ、国内外を問わず「本当に困っている人」へ自ずと届き始めているのかもしれない。

