そうした考え方を続けていると、「日々接する人々は自分なりの考えや正しさを持って生活している」と、配慮するような気持ちが芽生えてくるかもしれません。
また、誰かに何かを伝える際や誰かの行動を促す場合は、「相手の正しさに寄り添いながら言葉をかけよう」と、心がけることができるかもしれません。
人類学から学ぶコミュニケーションのための「3つのヒント」
人類学者は現地調査を行う際に、自分とはまったく違う考えや文化、言葉を話す人々と長期間一緒に生活をすることがあります。それをフィールドワークと呼びます。
人類学者がフィールドワーク中に、現地の人々に対して「自分の考え」や「正しさ」を主張した場合、その環境になじむことは難しいでしょう。
そのため、人類学者は自分の持っている「考え」を客観視し、それが多くの考えの1つであると認識します。そのうえで、その考えをフィールドワークで出会う人々に押し付けないよう気をつけます。
筆者がアフリカでフィールドワークを行った際も、その点に気をつけた経験があります。その経験から、誰かとの衝突や”正しさ”の押し付け合いにならないための、コミュニケーションの方法があることに気がつきました。
その方法に近づく、3つのヒントをご紹介します。
1つ目は、「視点の移動」です。これは自分や相手の視点(考え)を行き来して、お互いの考えを客観的に見る行為を表します。例えば、メールやメッセージを送る際、「あの人はどう感じるのかな?」と想像を巡らすこともその一つです。
人類学者は、言葉をかわす人々の背景や文化をイメージしながら、相手の言葉の意味を考え、自分の言葉を伝えます。それは相手とのコミュニケーションを円滑にしてくれます。
ここで大切なのは「私がこう考えるから」「私が正しいと思うから」と自分の考えにのみ目を向ける状態から距離を取ることです。自分の考えや感情からのみ言葉を発するのではなく、言葉を受け取る側の考えや事情に想像力を働かせ、言葉を伝えた後に相手にどのような変化が起きるかを考えることが、「視点の移動」になります。

