2つ目は、「第3の視点」です。これは「視点の移動」をしたのちに、私と相手が対話している状況を客観的に見る視点です。例えて言うならば、テレビを見ている視聴者の視点だと考えてください。
人類学者は、「フィールドワークで一緒に生活する人」と「研究者である自分」の考えを行き来することがあります。筆者の場合は、アフリカのマサイという民族を研究していたため、マサイと日本人の視点を行き来していました。その際、マサイの考えを尊重をしつつ、求められる場合はマサイと日本人、双方の考えを踏まえた助言をすることもありました。
マサイと日本人、それぞれの考えが出会い、その状況をテレビの旅番組やドキュメンタリー番組を見ているような視点で客観的に眺めることで、問題の解決策や新しいアイデアが生まれることがあります。
「正しさ」とはある人の状況や背景によって、ある人が「正しい」と認識しているものになります。そのため違う状況や背景を持つ人にはその「正しさ」が伝わらなかったり、それが「正しくない」と思われてしまうことがあります。
「正しさ」とは自分の1つの意見や主観であると認識してみましょう。
例えば、古いデニムを見て、「ビンテージ感があってかっこいい」と感じる人と「ボロボロで汚い」と感じる人がいるかもしれません。どちらの人にとっても、その感覚は自分の中での「正しい」感覚のため、「どちらが合っている、間違っている」という話ではありません。
これらのヒントを頭の片隅に入れて言葉を伝えようとすると、あなたには、次のような3つの変化が起こります。
・相手の考えを尊重できるようになる
・状況を客観的に見て、感情のままに言葉を発することをしなくなる
相手と信頼関係を築く「人類学」
人類学は、未知の民族を理解するため発展してきた学問です。
そうした中で人類学者がフィールドワークで使ってきたコミュニケーションの方法は、相手の文化や考えに寄り添いながら、相手と信頼関係を作るものと言えるでしょう。
だからこそ人類学は、違う正しさや考えを持った身近な人と接する時にも役立つはずです。

