最後に、一点だけ強調しておきたい。表示規則の逸脱が強い印象を残すことと、その表情が本人の内心を正確に映し出しているかどうかは、別の問題である。
緊張やストレスの強い状況では、意図とは異なる表情が出ることもあるし、拡散される動画は多くの場合、一部を切り取ったものである。実際、今回拡散した映像についても、会見全体の文脈や、その前後のやり取りまでは確認できない、という指摘も一部から出ている。
表情がかみ合っていなくても、必ずしも「不誠実」というわけではない
今回、私たちが嫌悪感を覚えたものの正体は、山本氏の人柄そのものというより、「その場が暗黙のうちに求めていた表情の“型”から、どれだけ外れて見えたか」という、私たち自身の知覚の反応である。
深刻な場面で見せた表情が強い反発を招くとき、そこで測られているのは、多くの場合、本人の誠実さそのものではなく、表情と場面の「かみ合わせ」なのだ。
その意味では、山本氏の今回の会見は失敗だったと言える。だが、表情のかみ合わなさが「=不誠実」というわけではない。私たち受け手側も、切り取られた会見映像ですべてを判断するのは危険だということを念頭に置いたほうがいいだろう。
【参考・引用文献】
※1:Ekman, P. & W. V. Friesen (1969) The repertoire of nonverbal behavior: Categories, origins, usage, and coding, Semiotica, 1(1), 49-98.
※2:Ekman, P. & W. V. Friesen (1969) Nonverbal leakage and clues to deception, Psychiatry, 32(1), 88-106.
※3:Owren, M. J. & J. A. Bachorowski (2003) Reconsidering the evolution of nonlinguistic communication: The case of laughter, Journal of Nonverbal Behavior, 27(3), 183-200.

