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ロシアに燃料危機を起こしたゼレンスキーと惰性の攻撃続けるプーチン…戦争の行方は斬新な戦略の有無で決まりそうだ

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2026年6月22日、ロシアのモスクワ郊外にある閉鎖されたガスプロムネフチのガソリンスタンド(写真:EPA=時事)
  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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この攻撃の特徴は、長距離であることだ。ウクライナとの国境から2800キロも離れているのだ。ドローンがこれほどの距離を克服できたため、現在、ロシアの主要製油所の85%が、潜在的にウクライナの長距離ドローンの射程内にあるといわれる。

ウクライナがさらにドローン攻撃の対象を地理的に拡大するのは、確実だ。となれば、ロシアの精製能力はさらに減少する。ロシアにとって、防空網などで守りにくい国土の広大さが弱点になった形だ。

その意味で、ロシアの燃料危機はまだ始まりと考えるべきだ。「ロシアにとって地獄はまだこれからだ」というウクライナ側の発言が不気味に響く。

今後起こりそうなロシアの経済・社会的な危機とは?

こういう状況の中、今、ロシア側専門家が懸念し始めたのは、問題が単に自動車用のガソリン不足に終わらず、経済全般に波及する可能性だ。ガソリン以外にも、ディーゼル燃料、航空機用燃料という3つの主要な石油製品の生産が大幅に減少するという見立てだ。

特に懸念されているのは農業への深刻な影響だ。具体的には、今秋の収穫時期を前に、ディーゼル燃料の不足でトラクターが動かなくなり、収穫量が大幅に減少しかねない。さらに収穫や食料品を都市に運ぶトラック便も減少し、食料不足が顕在化するとの予測もある。専門家の間では「パンがなくなるのではないか」との声が出始めている。

このような深刻な影響が懸念されているガソリン危機に対し、クレムリンの対応はどうなのか。

率直に言って、後手後手に回っている。プーチンは、ガソリン不足について「危機的ではない」と述べるなど、具体的対応より、世論の鎮静化を優先した。本稿執筆時点でも明確な対応戦略を打ち出すことができていない。

冒頭に触れたキーウなどの住宅への攻撃も、ウクライナの継戦能力を奪うための一貫した戦略の空爆ではない。プーチンの怒りに任せた一過性の報復にすぎない。

今後この空爆をいくら続けても、戦争の行方に社会・経済面で影響を与えそうもない。なぜなら、昨年末から今年初めまでの猛烈なインフラ攻撃で暖房が断たれても、士気を失うことなく耐え抜いたウクライナ市民からすれば、今回の報復攻撃で大勢の死者が出ていることは辛いだろうが、ウクライナ人の気持ちを折ることは不可能だろう。

ウクライナ東部ドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)を中心とする地上戦でも、ロシアの惰性による戦争ぶりがはっきりしている。東部へ攻勢を強めた2025年秋以降、ロシア軍は漸進的な占領地拡大を続けたものの、いまだ戦略的要衝を1つも制圧できていない。

今年に入ってからは、新型の高性能ドローンを活用したウクライナ軍の新たな攻勢の前に、逆に占領地を減らす局面が続いている。

こうしたウクライナ側の立役者は、今年1月に若干34歳の若さで就任したミハイロ・フェドロフ国防相だ。軍人ではなく、デジタル改革の専門家であるフェドロフは、ドローンによりロシア軍の補給網や司令部など前線後方を攻撃する「中距離ストライク」などの新戦略を編み出し、戦況の局面転換を実現した。

ドローン技術を生かしてさまざまなブレークスルーを実現してきたウクライナ。その懸命の努力が、報われる日がやってきた。

トランプが「パトリオット」のライセンス生産をウクライナに認めた意味

7月上旬、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談が開かれたアンカラでゼレンスキーとトランプ大統領の個別会談が行われた。そこでトランプは、ウクライナが切望していたアメリカ製防空システム「パトリオット」ミサイルのウクライナでのライセンス生産を認めると初めて表明したのだ。おまけにロシア領内へのミサイルやドローンによる長距離攻撃も容認した。

実は、ロシアによるキーウなどへの大規模空爆で、ウクライナの防空態勢には大きな弱点があった。ウクライナの防空網は、ドローンや巡航ミサイルの迎撃は可能だが、弾道ミサイルについては、パトリオットの不足で迎撃するのが難しくなっていたのだ。それだけにパトリオットのライセンス生産認可は大きな成果だ。

もっとも、実際にパトリオットのライセンス生産がいつ始まるのかの見通しは立っていない。しかし、25年初めの2期目就任以来、ロシア寄りの和平仲介をしてきたトランプが、ウクライナの新戦略の奏功ぶりを見て、一転してウクライナに好意的な仲介を始める可能性が出てきたことも意味する大きな局面転換と言えるだろう。

一方で、ウクライナとは対照的に、ロシア軍上層部では、侵攻の難航を受けておなじみの下克上の動きがまたぞろ出てきた。制服組による民間出身の国防相外しを図る動きだ。今回の場合は、制服組トップで事実上、侵攻作戦を仕切っているゲラシモフ参謀総長がベロウソフ国防相の追い落としに動いている。

正確な情報をプーチンに伝える国防相が、制服組から攻撃されている

ベロウソフは、経済学者出身ながら国防省改革の期待を受けて24年5月にプーチンから任命された。しかし、国防省に近い従軍記者らによると、ウクライナ軍の新攻勢が始まった今年3月、ベロウソフはプーチンと一対一で会い、ウクライナの新型ドローンに押されてロシア側の攻撃が難航していると率直に報告したという。

通常、大統領に戦況を報告するのはゲラシモフの権限だ。このため、自らの承諾を得ないままベロウソフが直訴したことにゲラシモフは激怒し、参謀本部がベロウソフへの攻撃を始めたわけだ。

ゲラシモフは、補給面での問題発生などは国防相であるベロウソフの責任だ、とプーチンに報告したという。もともとゲラシモフは、実際の進軍の規模より7〜8倍過大な数字をプーチンに報告しているというのが従軍記者らの見方だ。

プーチン政権下では、6月に死亡が発表されたセルゲイ・イワノフ元国防相が07年、制服組との対立が原因で、国防省トップの座から降りた経緯がある。戦況がロシアにとって不利に動き出している今、国防省の2トップが争っている場合ではないと思うが、逆に戦況が苦しくなっているからこそ、浮上した問題とも言えよう。ロシア軍の旧態依然ぶりを象徴する事態だ。

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