現状、どのチームでどれだけFIFA AI Proが有効に使われたのか、というデータは開示されていない。そもそもFIFAも、プライバシーとセキュリティの観点から、「どのような戦術分析が行われているか、詳細な中身には関与していない」という。ただし利用量は右肩上がりに増えているという。
伝説の審判・コッリーナ氏が語る「技術と審判」の関係
FIFA AI Proや映像データなどは、FIFAの運営チームにも提供されている。もちろん、審判団にもだ。
FIFAで審判委員会会長を務めるピエルルイジ・コッリーナ氏は、「審判分析チームもこのシステムの恩恵を受けている」と話す。コッリーナ氏は長くイタリアサッカー連盟で審判を務め、W杯などの国際大会でも多数の審判経験を持つ。2002年日韓W杯で審判を務めたこともあり、日本でも知名度は高い。
「審判が試合に向けて準備する中で、対戦するチームの戦術や選手の特徴・癖をあらかじめ把握しておくことは非常に重要なことだ。私が2002年日韓W杯決勝の審判を務めた時には、VHSのビデオテープを何本も部屋に持ち込み、一日中、巻き戻しや早送りを繰り返して分析していた。現代の審判たちが、このような素晴らしい最新技術を使って試合の準備をできることが、本当に羨ましくて仕方ない」
コッリーナ氏は笑いながら、FIFA AI Proのような技術をそう評価する。
VARも含め、審判行為へのテクノロジー導入には議論がつきものだ。判定に時間がかかるようになったことについても、否定的な意見がある。
コッリーナ氏は「試合の流れを止めないよう、スピードアップする努力は必要」としつつ、次のように話す。
「少し時間がかかったとしても、誤った判定を下すよりは、正しい判定を下す方がはるかに重要だ。判定のために1、2分待つ方が、判定のために何十年も議論と不満が残り続けるよりはるかに良いはずだ」

