「食道は心臓に近い場所に位置していますから、炎症が起きると胸の真ん中が焼けるように痛くなります。激痛で冷や汗が出る方も多いんですね。そのため『狭心症』や『心筋梗塞』を心配し、受診されるケースもあります」
特に働き盛りの40~50代の男性にこの傾向が強い、と井上院長。深夜まで残業をし、帰宅後にドカ食いをする。あるいは連日のように飲み会が続き、そのまま寝てしまう。そうした生活習慣が胃や食道に多大な負担をかけ、悲鳴を上げさせるのだ。
「強い胸痛は、夜遅い食事や飲酒のあとに起きることが多いです。最近忙しくて食生活が乱れがちな方は、少し生活を見直されるといいかもしれません」
「左肩が痛い」は心臓病のサイン?
一時期、胸の症状がひどかった筆者が、心臓病を疑ってネット検索を繰り返していた際に何度も見かけた言葉がある。
それは、「心臓病になると放散痛として左肩に痛みが出る」というものだ。これは、心臓からのSOSなのだろうか。
その問いに対し、井上院長は「『左肩が痛い=心臓病』は、ネットの中で一人歩きしてしまった不確かな情報です」とキッパリ。
「人間の心臓は左側にあると思われがちですが、実際は体の『真ん中』にあります。左心室の筋肉が少し大きいため、左側を意識しやすいのだと思いますが、本当の心臓病の放散痛は『両肩』に来ることが多いです」
さらに、「痛む場所」の示し方でも本物かフェイクかを見抜けるそうだ。
「『ここが痛いんです』と、指一本でピンポイントに痛む場所を示せる場合は、心臓ではなく、骨や筋肉などの局所的な炎症を疑います。特に心臓の痛みと勘違いされやすいのが、『肋軟骨(ろくなんこつ)炎』。風邪で激しく咳き込んだ衝撃などでも簡単に肋骨や胸骨周辺を痛めてしまうのですが、こうした炎症の場合、『ここ!』とはっきり痛みを特定できるのが特徴です」
本物の心臓の痛みは、もっと広い。手のひら全体で胸の中央を押さえたくなるような、締め付けられる痛みとして表れることが多いのだという。

