「ちゃんと確認していなかった私の落ち度ではあるんですが、そのときはかなりショックでしたね」
SNS発信は会社からすれば大きなレピュテーションリスクを秘めている行為だ。特に銀行ともなると、顧客情報やインサイダー情報を意図せず公開してしまうかもしれない。銀行が禁止するのも当然だろう。
しかし、銀行員として社会人経験を積みながら、モデル業やSNS発信を継続するキャリアを描いていた当時の佐野さんにとっては、この事実はキャリアプランの根幹を揺るがすものであった。
それでも、佐野さんにとって三井住友銀行の内定は、選考対策に尽力してくれたリクルーターをはじめ、数多くの人の力を借りて勝ち取ったもの。「内定辞退」の選択肢はなく、制限を受け入れながら、銀行員としてのキャリアを歩む覚悟は持っていた。
加えて、佐野さんは銀行からさらに厳しい現実を突きつけられることになる。
「入行前に人事に呼び出されたときに、『金銭の授受が発生しなかったとしても、モデル業やSNS発信には制限がつくことになると思う』と言われて。実際に、入行後にはかなり厳しく制限されていましたね」
特に佐野さんを苦しめたのが、投稿頻度に関する制限だ。
努力の結晶であるSNSをやめることは自己否定そのもの
当時の三井住友銀行には、佐野さん以前に副業でSNS発信をやる人がいなかった。つまり「前例がなかった」わけだが、それゆえに投稿頻度に関する明確な基準もなく、会社としては場当たり的な制限をかけざるをえなかった。
「人事からは、明確に『月○回以上は投稿したらダメ』と言われていたわけではなく、『なるべく投稿は控えてください』という伝え方をされていました。私自身も銀行に勤める以上、大学時代の頻度でSNSを更新してはいけないことは理解していました。でも、明確な基準がないと投稿の計画も立てられないし、フォロワーさんも徐々に離れていってしまって、かなり苦しかったですね」
入行前に人事から釘をさされ、発信活動に制限がかかることは理解していた。しかし、その制限の程度の認識においては、銀行と佐野さんの間に大きなズレがあったのだ。

