著者が指摘しているように、あらゆる文化のなかで、もっとも変化に時間を費やすのが食の領域だ。
映像や音楽であれば、個人で楽しめるだけに広がりやすい。ファッションは肌に触れるものであり、人に見られもするので少しばかりハードルが高くなるかもしれないが、それでも変化しづらいというほどでもないはずだ。
しかし、食はそうもいかない。体に入れるもので、しかも宗教や土着文化の影響も強く受けることになるため、簡単には受け入れられない部分があるわけだ。
インドでも十数年前までは、当時の著者が勤めていた外資企業でさえ“食に保守的な人たち”がほとんどだったようだ。そもそも自炊文化があり、外で食べるにしても多くの場合はインド料理。それ以外のものを食べるとして、イタリアンのピザやインド風中華(Desi Chinese)くらいのイメージだったという。
フードデリバリーはカレー以外を選んでいる
日本人であれば、招待されたら(苦手なものであっても)がんばって食べる人が多いのではないだろうか。しかしインド人の場合は臆せず、「食べたくない」「嫌だ」と言うのだという。
とはいえ近年はインドでも、都市部であれば、いろいろな料理を日常的に食べる人が徐々に増えてきているようだ。「韓国料理はすごくおいしい。知ってるか?」「タイ料理がおいしかった。タイカレーは最高なんだぜ」というような声が飛び交うようになっているだけに、インドの食も多様化が始まる前夜まできていることを著者も実感しているそうだ。
そうした料理は家では作れないので、レストランに食べに行くか、そうでなければデリバリーという選択になる。そんな背景も相まって、デリバリーが大きく伸びているのだろう。
Liciousは「Farm-to-Fork(農場から食卓まで)」とコールドチェーンを強みに、D2Cモデルを展開する企業。今後拡大していくであろう冷蔵流通のノウハウを提供する一方で、「オンライン販売のノウハウや消費者データを得ることにより、インド市場への理解を深め、今後の事業展開の足がかりにしたい」という長期的な視野に立った戦略を持っているのだそうだ。
いずれにしてもこうした日本企業の動きは、今後も加速していくのだろう。それらがどのようにインドの文化や生活様式とリンクしていくのか、そこからどのように新しい価値観が生まれていくのか、期待したいところだ。

