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約束できないと伝えられるか
頼まれごとをされたとき、つい「大丈夫です」「やります」と答えてしまう。期待に応えたい、断るのは申し訳ない、関係を悪くしたくない……。そうした気持ちは誰にでもあります。
しかし、その場の空気に流されて引き受けた約束が、結果的に守れなかったとしたら、失われるのは単なる1つの約束ではなく、「この人は言葉どおりに行動してくれる」という信頼そのものです。
フランスの思想家モンテーニュは、人間が自分の限界を認めることの重要性を説きました。自分の状況や能力を正確に見極め、そのうえで判断を下すことは、むしろ責任ある態度です。無理に引き受けてあとから破綻するよりも、最初に正直に伝えるほうが、はるかに信頼に資する行為なのです。
誠実さとは、常に「はい」と言うことではありません。むしろ、「はい」と言うべき場面と、「いいえ」と言うべき場面を見極めることにあります。約束とは、未来に向けた言葉です。そして誠実さとは、その言葉に現実を合わせようとする姿勢です。
最初から守れない約束をしないこと――それもまた、約束を守ることと同じくらい大切な道徳なのです。

