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つい「大丈夫です」と言ってしまう人が信頼を失う理由 期待に応えたいから、関係を悪くしたくないから…が招く代償

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自分を貫くための道徳思考 正解のない時代こそ「心の軸」が武器になる
誠実さとは、常に「はい」と言うことではありません(写真:河野修一/PIXTA)
  • 小川 仁志 哲学者、青山学院大学地球社会共生学部教授

INDEX

私たちは「正しさ」には答えがあるものだと教えられてきました。与えられたルールを守りさえすれば、社会のなかでうまく生きていけると考えられてきたのです。
しかし、現在は価値観が多様化し、「何が正しいのか」を外側に求めても、答えが返ってこない場面が増えています。正解のない時代だからこそ、自分のなかに軸を持ち、自ら答えを導き出す真の思考力が重要になっています。
サルトル、ニーチェ、カント、アリストテレスといった古今の哲学者の知見を手がかりに、ビジネスや人間関係の課題を解決するために必要な道徳哲学を、青山学院大学教授で哲学者の小川仁志氏監修の書籍『自分を貫くための道徳思考 正解のない時代こそ「心の軸」が武器になる』から一部抜粋、再構成してお届けします。

約束できないと伝えられるか

頼まれごとをされたとき、つい「大丈夫です」「やります」と答えてしまう。期待に応えたい、断るのは申し訳ない、関係を悪くしたくない……。そうした気持ちは誰にでもあります。

しかし、その場の空気に流されて引き受けた約束が、結果的に守れなかったとしたら、失われるのは単なる1つの約束ではなく、「この人は言葉どおりに行動してくれる」という信頼そのものです。

フランスの思想家モンテーニュは、人間が自分の限界を認めることの重要性を説きました。自分の状況や能力を正確に見極め、そのうえで判断を下すことは、むしろ責任ある態度です。無理に引き受けてあとから破綻するよりも、最初に正直に伝えるほうが、はるかに信頼に資する行為なのです。

誠実さとは、常に「はい」と言うことではありません。むしろ、「はい」と言うべき場面と、「いいえ」と言うべき場面を見極めることにあります。約束とは、未来に向けた言葉です。そして誠実さとは、その言葉に現実を合わせようとする姿勢です。

最初から守れない約束をしないこと――それもまた、約束を守ることと同じくらい大切な道徳なのです。

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