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つい「大丈夫です」と言ってしまう人が信頼を失う理由 期待に応えたいから、関係を悪くしたくないから…が招く代償

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自分を貫くための道徳思考 正解のない時代こそ「心の軸」が武器になる
誠実さとは、常に「はい」と言うことではありません(写真:河野修一/PIXTA)
  • 小川 仁志 哲学者、青山学院大学地球社会共生学部教授
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「毎日少しでも勉強する」「体調を整えるために早く寝る」「無理な仕事は引き受けない」――こうした自分自身に対して決めたことも、立派な約束の1つです。しかし、この「自分との約束」は、他人との約束に比べて簡単に破られてしまいがちです。誰にも見られていないから、少しくらいならいいだろう、明日やればいい……。

「自分で決めたことを守れない」という状態が続くと、私たちは無意識のうちに「どうせ自分は続かない」「決めても意味がない」と感じるようになります。アメリカの思想家エマーソンは「自己信頼(Self-Reliance)」の重要性を説きました。

自分の言葉に自分が従うこと。それが、主体的に生きるための出発点なのです。

スイスの心理学者ユングも、人が成熟していく過程を「自己との統合」として捉えました。自分の言葉と行動を一致させ、内面の一貫性を保つこと。その繰り返しが、自分自身に対する信頼感を育て、人格の軸を形作っていきます。自分との約束を大切にすることは、自分を信じる力を育てることでもあるのです。

忙しさを約束を破る理由にしない

『自分を貫くための道徳思考 正解のない時代こそ「心の軸」が武器になる』(日本能率協会マネジメントセンター)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

約束を守れなかったときに「忙しかったから」と説明してしまうことがあります。しかし実際には、「時間がなかった」というよりも、「優先しなかった」という側面が含まれていることも少なくありません。

なにを選び、なにをあと回しにしたのかという判断が、結果としてあらわれているのです。

古代ギリシアの哲学者エピクロスは、本当に必要なものを見極めることの重要性を説きました。フランスの思想家ヴェイユも、「注意を向けること」こそが倫理の出発点だと述べています。忙しさに追われているときほど、注意は散漫になり、大切なものを見落としやすくなります。

大切なのは、すべてをこなすことではなく、なにを優先するかを自覚的に選ぶことです。忙しさを理由にするのではなく、そのなかでなにを選んだのかを見つめること。その熟慮が、約束を守る姿勢となり、やがて信頼として形になっていきます。

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