日本との違いとして、岸井が印象に残ったと話したのは食事の時間だった。
「台湾で仕事をしたことがある人は、みんな言うと思うんですけど、向こうは“ごはんの時間はごはんの時間”なんです。温かいものを温かいまま食べることを、すごく大事にしている。日本だと『このシーンが終わってからお弁当を食べます』ということもありますけど、台湾では、ごはんが来たらそのタイミングでちゃんと食べるんです。その感覚がすごく新鮮でしたし、食べる時間を大切にする文化なんだなと感じました」
喪失の中にいるちづみが、異国の街で少しずつ呼吸を取り戻していく物語。
台湾の現場に流れていた、温かいものを温かいまま受け取るような時間は、岸井がちづみとしてそこに立つための感覚にも、静かにつながっていたのかもしれない。
岸井ゆきのが語る、「小さいからいいんだ」の意味
そして、この作品の核にある言葉を問うた時、岸井が迷わず挙げたのが、シンシンがちづみに向けて告げる「小さいからいいんだ」という一言だった。
「『小さいからいい』って、受け取り方によっては軽く聞こえるかもしれない。でも、その人の生き方とか、今どんな状態にあるのか、精神的にどうか、身体的にどうか、そういうことを全部いったん脇に置いて、ただ『君は小さいからいいんだ』と言ってくれることって、もしかしたらすごく大事なことなんじゃないかと思うんです」
「本当は、立ち止まっているのか前進しているのかなんて、小さいこととは関係ない。そういう自分を認めてくれる人が、自分以外にいるということ。それが自分自身でもいいんですけど、そこがこの作品の核だと思っています」
その言葉は、岸井自身の実感ともつながっていた。
公式コメントにあった「ほんとうに大事なことは誰もが知っているけれど、教えてもらうのはあなたでなければならない時がある」という言葉について尋ねると、岸井は「ありますね」と頷いた。

