“みんな”ではなく、“あなた”。
その小さく絞られた視線にこそ、岸井ゆきのという俳優の芯が表れていた。
吉本ばなな原作、喪失を抱えた女性をどう演じたのか
そんな岸井ゆきのが次に出演するのは、吉本ばななの短編小説を原作にした映画『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』だった。
台湾の俳優、ツェン・ジンホアとW主演を務める本作で、岸井が演じるのは、最愛の母を失い、旅先の台北で“シンシン”という男性と出会う主人公・ちづみ。異国の地での出会いを通して、喪失のただなかにいる彼女が少しずつ再生していく姿が描かれる。
岸井は、この作品を「すごく小さな物語」だと言った。
「最初から、ちづみ役は岸井でやりたいと真壁幸紀監督がおっしゃっていたと聞いて、そのこと自体がとてもうれしかったです」
「そして物語は、とても普遍的でもあるなと感じました。本当に大事なことって、決して大げさなことではなくて、日常の中にある小さなことにちゃんと目を向けられるかどうかなんだと思うんです。そうすることで、ふさがっていた視界に少し光が差したり、出口が見えてきたりすることもある。そんなふうに思わせてくれる、あたたかい作品だと感じて、一緒にやりたいと思いました」

