だとすれば、対中関係はできるだけハイレベルの対話を通じて誤解を解き、これまで両国の首脳が確認してきた「戦略的互恵関係」に早期に立ち戻ることが必要です。
24年11月15日にペルーで石破・習近平会談が行われ、そこで「戦略的互恵関係」がしっかりと確認されました。私はカウンターパートの王毅外相とできるだけ早く会ったほうがいいと思い、翌12月に北京に飛びました。
当時の日中間には、反スパイ法による日本人ビジネスマンの拘束や蘇州での日本人学校のスクールバス襲撃事件など、さまざまな懸案がありました。それでも問題を1つずつ解決し、一緒にできることを増やしていこうとの方針で、会談に臨みました。
その甲斐あって、中国がわが国のEEZ(排他的経済水域)内に設置したブイも撤去されましたし、東日本大震災以降、差し止められていた日本人の短期ビザなし渡航も再開された。輸入禁止になっていた海産物も輸入再開手続きが開始され、それを肉や米に広げていこうとも話し合っていました。
日中関係が進もうとしていただけに、今日の状況はとても残念です。「対話のドアは開かれている」と言うだけではなく、日本側から積極的に事態の改善に取り組んでほしいと思います。
民主主義が直面する「大きな危機」
――しかし中国との対立を煽ることで、政治的優位性を維持しようという勢力もあることは事実です。
政治的対立や社会の分断は、ある意味で世界的に見られる傾向です。グローバリズムや新自由主義、あるいは移民という存在に対する反発が背景にあると言われています。
グローバリズムや新自由主義で格差が生じ、それに対するいら立ちが底流にあります。2度にわたってトランプ政権が誕生した原動力とも言われていますが、わが国においてもそれに近い風潮が感じられます。
政治はそういった声に真摯に向き合い、そうした人々の不満を解消していくことができるのかを考えないといけないのであって、そこに油を注ぎ、政治的エネルギーに変えようという試みはすべきではありません。政治はあくまでもこれからの日本の国づくり、日本が目指すべきビジョンを真剣に考え、国民に提示していくという方向を目指すべきです。
日本の民主主義や選挙がネット内の虚像や捏造された情報によって左右されるという危険性もあります。これは民主主義の大きな危機といえます。

