しかもネットを通じた伝播力は、速く強い。私は県議選も含めてこれまで14回の選挙を経験しましたが、今回の衆院選ほど激しく誹謗中傷されたことはありませんでした。「岩屋を退治する」などという表現まで飛び交ったことには、非常にショックを受けました。
選挙とは民主主義の実現のための手段です。当然のことながら最低限のマナーが求められ、新人の頃には先輩から「絶対に相手候補を誹謗中傷してはいけない」と厳しく教え込まれたものです。昨今の状況を見ると、もはや選挙自体が異質なものになり果ててしまったのかと感じてしまいます。
自民党は「本来の保守」を見失っている
――「国益を守る」という概念も変わっているのではないでしょうか。防衛相や外相を務められた岩屋さんには、「何が国益か」について広い知見もある。にもかかわらず、今年の衆院選ではそれを一切無視するような「媚中」などといった侮辱的な言葉が散見された。しかも、かつて自民党を支持していたと見られていた層からです。
自民党はこれまで公明党と連立を組んできました。その意味で自公政権は、バランスが取れた中道保守政権だったと思います。
ですが、自民党がほぼ政権を担ってきたここ30年間で、日本の国力は低下してしまった。そうした不満が鬱積し、自民党よりかなり右、あるいは左といった勢力の出現につながっていったのだと思います。かつての自民党の支持層の一部も、右傾化したのでしょう。
そうした層の票を取り戻そうと、自民党が右旋回したことは否定できないでしょう。しかし、それでは「本来の保守とは何か」を見失ってしまいます。伝統を尊重し、秩序を維持し、つねに全体のバランスに留意することこそ、保守政治家の本分だからです。
私は石破政権で外相に就任すると、これまでどおりに日米同盟を基軸にして、全方位外交を展開しました。25年1月のドナルド・トランプ大統領の就任式に日本の外相として初めて出席するなど、日本外交の基軸である日米関係の進展のために汗をかきました。
また近隣諸国についても、日本は東アジアの平和と安定に寄与できなければ世界に向かってものが言えませんから、中韓との関係にはとくに配慮しました。日韓関係は岸田文雄政権のときにかなり改善していましたが、24年12月には当時の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令を発令する騒ぎが勃発しました。私はその直後に訪韓し、日韓関係に影響が出ないように細心の注意を払いました。
――中国についてはどうですか。昨年11月7日の衆院予算委員会での高市首相の「台湾有事発言」で、現在の日中関係は過去最悪の状況です。
高市首相の発言は政府の見解を十分に消化したうえでのものではなく、質問に咄嗟に反応する形で発せられたものだと思います。その後、高市首相は事実上の訂正を行っていますし、わが国の台湾に対する方針は変わっていないと明確に示しています。

