スペインは、コロナ禍収束後の復興基金として、EUからこれまでに479億6000万ユーロ(約8兆8419億円)の助成金と3億4000万ユーロ(約626億円)の融資を受け取っている。これはEU加盟国全体の中で2番目に大きい額だ。2025年初頭、プエンテ運輸大臣は国内の交通インフラに100億ユーロ(約1兆8438億円、うちEUからの復興基金76億ユーロ)を投資すると発表した。Adifは2024年から2025年にかけて69億ユーロ(約1兆2722億円)を受領しており、これはほかのインフラ関連の機関と比べて最大だった。
それにもかかわらず、鉄道はインフラの故障による遅延や運休が多発し、その際に旅客に支払われる補償金の額は過去数年で倍増している。
2018年に現サンチェス政権が発足して以降、運輸大臣やAdifの元会長2人などの汚職が次々と発覚。現在も捜査が続いている。スペイン国民は、鉄道が混乱している原因が単なる経営不振なのか、上層部による資金の不正利用なのか疑問を抱かざるをえない状況がある。そんな中で発生したのが今回の事故だった。
EUが、スペイン国内のカネの流れに対し、疑惑の目を向けるのは当然のことと言えよう。
新線建設の一方で維持費は抑制
1992年、セビリア万博の開催に合わせて開業したスペインの高速鉄道は、現在では総延長約4000kmに達し、世界一の中国に次いで2番目、ヨーロッパでは最長距離を誇る。

スペインは高速鉄道網の拡充に、ヨーロッパ各国の平均の2倍にあたる年間GDPの約0.6%を投資、さらに建設費用を国際的な平均価格より大幅に下げることで、距離を大きく伸ばした。スペイン高速鉄道は、国の近代化、領土の結束、技術力の象徴となった。
しかし、資金の大半は新線建設や将来的な計画路線などへの投資へ回し、既存路線の設備更新や改良といった維持に対する投資は抑えられていた。

